前 次 新10 1- 板
109:2/3 8/1 22:12:20.55 ID:lIEZXwY70
「それもそうだ。今までは、こんな明確に生命の危機を感じたことはなかった。言うならばこの楽しさは、リアルなスリルからくる嗜虐的かつ自虐的な快感だ。
そう、つまり、これは決して純粋な感情ではない。宝が眠る底なし沼に自ら入るような、恐怖が混じった危険な面白さだ」
女は浅く息をはき、自分が元居た場所に向かい駆ける。
男を中心に捉えた女の視界の隅に映るモノ―― それは、白と黒のボール。
「だが、俺は今ここで自ら沼に入る必要があるのか?答えはNOだ。――生命を無駄にするもんじゃない」
サッカーゴールの下、やや自嘲気味に笑う男は、次の瞬間腰に力を入れる。
女「受け取れ男ォォ!!これが私の愛のカタチダァァァァァアアア!!!!!!」
叫びと共に光速を超えて振られた女の右足は、空気の摩擦により瞬時に発火・炎上し光を放つ。足の軌跡には陽炎が生まれ、女の右半身が歪む。
足がサッカーボールと衝突した刹那、ボールは衝撃に耐えられず瞬間的に破裂し炎上。振りぬかれた際の鎌鼬によって灰塵がビー玉大に集結し、後から追ってきた風により凍結。そのまま男がいるゴールに向け吹き飛ばされる。サッカーを始めてからここまで約0,2秒。
時速300キロを上回る元サッカーボールを目の当たりにした男は、(女の変わり果てた愛さえも、この体全体で真っ向から受け止めてやる!)という気は全く無く、
「無理!!!!!!!!」
何の迷いも無く左に駆け抜けた。無論、逃げるためである。
前 次
ir ver 1.0 beta2.2 (03/10/22)