新10 1-
306:体育の剣道1/4 8/2 1:30:48.24 ID:Owb6px9M0
体育の剣道はとても面倒くさい。態々用具室から防具を運んでこないといけないし、この為だけに竹刀も買わされたし。
救いなのはあの剣道部の匂いの染み付いていない、授業専用の防具だということか。あの匂いは耐えられない。
――しかしまぁ、大和男子たるもの、紛い物とは言え刀を持てば血の騒ぎを止める事はできず、
「……最大戦速、かわせるか……!?」
利き足で床を叩き付ける様に蹴り、反対側の足で思い切り踏み込む。
大上段に上げていた竹刀を瞬時に横に構え、神速の抜き胴。ミリも動く事無く、相手の防具に叩き込んだ。
勿論、「胴」と叫ぶのも忘れない。これを言わないと有効じゃないというのは、つくづく剣道とは面倒くさいスポーツだ。
「胴あり! 進藤の勝ち!」
――それが模擬戦となれば尚更だ。
試合後の礼をすると、暑苦しい面を取る。久々に新鮮な空気が吸える。
男女混合のトーナメント。性差別撤廃には概ね賛成だが、何もスポーツの分野に置いてまでそれを実践戦でもいいだろうに。
大体、男子と女子では基礎的な身体のステータスが違う。圧倒的に女性が不利……
「絶望せよぉおおぉおをを!」
……いや、例外がいた。
俺が試合をしていたコート(?)の横で行われている試合、甲高い声と同時に、周囲がざわめく。
咆哮を上げたほうの選手が、飛翔し、勢いを付け竹刀を振り下ろす。受ける側の選手は当然これを竹刀で防ごうとする。
が、振り下ろした竹刀は横に構えた竹刀を叩き割り、面の網のような部分にヒビを入れ、頭に落ちる。
食らった選手は暫く阿呆みたいに突っ立っていたが、やがて文字通り崩れ落ちた。
担架に乗せられて退場していく……おかしいな、これは楽しい体育の時間なのに。ケガ人が5人も出るような授業じゃないのに。
そのケガ人を5人も出したクリーチャーが、面を取りつつ俺の傍に近寄って来る。
中身はは化け物ではなく、大きめな瞳と八重歯が似合う笑みを浮かべた、可愛い可愛い女の子。
「明人ぉおおおおおおおおおおおお! 見ていてくれたかぁあああああああああああ!?」
「ん、まぁ試合終わってからすぐな。……また学校の備品壊しやがって。
百合枝、お前のいいとこはその元気いっぱいなとこだ。でもな、薬だって度を過ぎれば毒になる。少しは控えろ」
「何を言うかぁ明人ぉ! 私のそういうところに惚れたんだろぉ!?」
「……まぁ、それはそうなんだけどな」
鳳百合枝。俺の彼女ということになる。名は体を表すとか言ったか? 百合って物静かなイメージがあるんだがなぁ。
その辺はあれだ、恋は盲目という奴なのだろう。実際百合枝の言う通り、彼女のその元気な所が好きだし。
告白して来たのが百合枝からってのがなぁ、俺の沽券に関わるというか何と言うか。
とりあえず、俺と百合枝は先程までトーナメント準決勝を戦っていた。それに二人とも勝ったという事は、つまり……

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