新10 1-
309:体育の剣道4/4 8/2 1:32:03.82 ID:Owb6px9M0
あまりの激痛に、視界が白く反転し、意識が遠退く。
「何ぃっ!?」
「……っ! 胴ぅっ!」
全身全霊を込めて、腕を動かし百合枝の胴に竹刀を当てる。
確かな手応えと共に、甲高く乾いた音が響いた。
「胴あり! 進藤の勝ち!」
体育教師が、俺の勝ちを宣言する。
それを聞いて安堵した俺は、意識を手放した。
目を覚ますと白い天井……じゃなくて、百合枝の顔が広がっていた。
「明人起きた!? 大丈夫!?」
「さぁ? 俺もどういう怪我したのか分からないから……つぅ」
上半身を起こすだけで左肩が激しく痛む。見てみれば、左肩から右脇腹にかけて包帯が巻かれている。
「骨折まではいかなかったみたいだけど、かなり青くなってたよ……ごめん」
「気にするな。お前と付き合ってから暫くは生傷の絶えない生活だったし」
「でも……」
「うじうじするな。空元気なお前らしく無いぞ? それにな」
かろうじて無事な右手で百合枝の頭を撫でる。
少し涙目になっている百合枝の瞳。泣いていたんだろうか。ますます彼女らしく無い。
「お前の愛情、受け止めない訳にはいかないだろ? しっかり受け取ったよ、お前の気持ち」
「あ、う、……明人おおおおおおおおおおおおお愛してるうううううううううううううううう!!」
「痛い痛い痛い痛い加減しろ」
ケガ人であることも忘れ俺に思いっきり抱きついて来る百合枝。がっちりとホールドされたせいで左肩が鈍く悲鳴を上げる。
まぁ、滅多に見れないしおらしい百合枝が見れただけでも得したと割り切るか……。
……言わずもがな、この後体育教師に呼び出されてきっちりとお説教された訳だが。
まぁ、反省文で済んだのは運がよかった方か。

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