新10 1-
53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 8/4 6:10:09.70 ID:97dqhGPu0
>50 続きッス
女が途中何度もへばりながらも、自販機パワーで何とか階段を昇りきった。
階段昇りと暑さで疲れた視界に映るのは、一面の墓だった。
男「おーい、こっちこっちー」
女がその光景にぼやっとしているうちに、男は墓の中心当たりまで進んでいた。
女が男のいる場所まで行くと、そこにはごく普通の墓が立っていた。
墓には『○○家(男の苗字)之墓』と刻まれている。
女「ここは・・・?」
男「俺んちの墓。ここにおふくろが眠ってる」
女「え・・・?」
男「2年前に、事故で死んだ」
女は男を好きになった時、母子家庭で育ったという事は聞いていた。
しかし、男の母親がいなくなった事は全く知らなかった。
女「・・・お父・・・さんは?」
男「さあな。俺が小さい頃に別れた、としか聞いてない。
あいつは、おふくろの葬式にも来てなかった」
男の目が、幾分か鋭くなった気がした。
鋭い中にも優しさを垣間見せるようなあの目ではなく、はっきりとした憎悪の目。
いつもと違う男の表情に、女は自然と涙を零していた。
蝉は、さらにけたたましく鳴いていた。

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