新10 1-
600:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 8/5 2:7:16.61 ID:NwGEe7Y00
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授業をサボりすぎだと担任に呼び出された。
せめて単位は落とさないようにと釘を刺されたのだが元よりそのつもりでわかった上でサボっているのだと言うと彼女は呆れたように笑っていた。――笑って済まされる程度ならわざわざ呼び出してほしくなかったのだが。
解放されたのは普段の俺ならとうに家に辿り着いている時間。とっとと帰ろうと考えながらロッカールームに向かっていると対面に一人の女生徒がいるのが見えた。
この時間帰宅部の連中は既におらず、部活生はその部活に従事しており人はほとんどいない。……今日の俺のように何か用事でもない限り、この時間にロッカー付近をうろつく奴はいないのだ。
俺がロッカールームに入るのと同様、彼女もまたロッカールームに入ってきた。名前は思い出せないけれども見覚えのある顔ではあるし、何よりロッカーが俺の隣だということは同じHRクラスであるようだった。
俺はまったく気にしないのだが――いや、気にしない風を装うのだが、彼女は明らかに俺の存在に動揺しているようで、ちゃっちゃと荷物をまとめて帰ろうと誓う。
普段は念入りに確認しつつ行う作業もおざなりに鞄を引っつかんで退室する……はず、だった。
「……あの、待って、……男……君」
呼ばれたなら当然無視はしない。例えそれが名も知らぬ女生徒からの声でも。
身体を向けて「なに」と問う。……何か、悪い予感はしていた。
彼女はロッカーを開けたり閉めたり開けたりしてどこか間を稼ごうとしているように見える。俺の中の警鐘はまるで氷山にぶつかる直前の豪華客船のように鳴り狂っている。理由もないのに。
やがて口を開いて、
「……その、私……私、男君のことがずっと……ずっと……好き……でした……」
血の気が引いた。


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