新10 1-
865:夏の思い出〜下 9/15 1:55:25.20 ID:HXHqeHI/0
彼女は急に俯き、言葉もなく、小さく肩を震わせた。そして。
女「男……正直に、答えてくれ」
上目使いに見上げる女の目尻に光るモノ。
女「私……迷惑、だったのか……?」
……いかん、ちょっとからかいすぎたか。
仕方ない。ガラにもないけど――たまには、いいだろう。
男「……いいや。迷惑なんかじゃない」
ぽん、と女の頭に手を置いた。
男「俺には――」
この夏を振り返れば、よみがえるものはただひとつだけ。
騒がしくて。賑やかで。
振り回され巻き込まれ、時には歩み寄って、あっという間に過ぎ去っていった。
男「――お前が居ない夏なんて、もう想像できないから、さ」
暑苦しい夏など吹き飛ばす、さらに熱い彼女との日々の記憶――
男「……まぁ、なんだ。だから、ありがとう」
女「……」
呆然とした女の顔に、みるみる朱がさしていく……そのまま見てると、こっちまで伝染ってきそうだったから。
男「……冷えてきたな。行こうぜ」
そう言って、差し出した右の掌。
女「お……男ぉぉぉっ!大好きだぁぁっ!!!」
そこに重なった彼女の左手は、あの日々の残滓を宿したようになお熱く。
男「耳元で怒鳴るな、やかましい」
そして今も――多分これからも。
この熱く騒々しい日々は、続いていく。

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