新10 1-
59:秋雨と台風〜10 9/16 0:20:02.29 ID:CjKpOFIs0
雲に覆われた秋空は、すでに夜の帳がおりていた。
女「今日は楽しかったな男ぉぉ!!」
男「そうだな」
女「むっ、何時になく素直だなぁ!!いいことだぁぁっ!!」
男「何時になく、とはなんだ」
女「そんな素直じゃない男も大好きだぁぁぁッ!!」
男「全く……っ!?」
ライトも点灯せず急に走ってきた車が、至近をすり抜けていく。
男「!」
女「きゃっ!!」
咄嗟に女を抱きすくめて、端へと避けたが。おかげさまで、もろに跳ねた泥水を喰らってしまった。
男「……ったく」
と。赤面し、見上げてくる女の視線と、視線が真正面からかち合った。
女「……ぉ…とこ……?」
これは……不味い。なんというか、非常に危険な空気だ。
相々傘。ぴったり身を寄せ合う二人。周囲に人影はなく、聞こえるのは雨音だけ。見つめ合う二人の世界―――
女「……っ」
女が目を閉じる。ぐるぐると渦巻いた気持ち。吸い寄せられるように――触れるような、くちづけ。
唇に宿った熱は、すぐに雨空に掠め取られていった。
女「……あは」
そろそろと唇に指をやる女が、すごくいじらしく見える。
男「……」
今日はらしくない。どうかしている。本当に。
そのまま、言葉らしいもなく。
男「じゃあ。また明日、な」
女「……うん」
女の家の前で、別れの挨拶。まだ、胸の動悸は収まっていなかった。

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