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184:ふたりの未来〜7 9/19 1:24:45.42 ID:YbihP0dV0
その後は、今まで以上に受験勉強に没頭する日々が続いた。
女とは、あれからまともに顔を合わせていない。
この選択をした俺に、合格を勝ち取るまでアイツのところに行く資格はない……そんな、くだらない義務感ゆえか。
いや――ただ単に、顔を合わせるのが、辛かっただけかもしれない。
固めた決意が揺らぎそうだったから。ただでさえ不安定な現状で、もう一押しされれば。すぐにでも破綻してしまいそうだったから。
そんな状況で受けた前期の試験。結果はぎりぎりで、不合格だった。
落ちたときの衝撃は凄まじく、何度女に連絡を取ろうか迷ったかしれない。だが耐えた。
そうしてあっという間に訪れた卒業式。人波の中、やけに遠く見えた女の姿。
心の中で、すまない、と呟いて。俺は、女に背を向けた――
残り時間はあとわずか。それこそ、死に物狂いで勉強に励み。その結果――何とか、奇跡的に後期募集の合格枠を勝ち取った。
そして――女との、一切の連絡が途絶えた。
ただひとつだけ。ふるさとの街を出るその日。家のポストに入っていた紙切れ。
そこには――
『今度は、私の番』
それだけ、見慣れた文字で書き散らかされていた。
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